ブラシレスDCモータの利点とは?ブラシ付DCモータとの違いも解説
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2021年8月10日
ブラシレスDCモータは、ブラシ付DCモータには欠かせないブラシと整流子を持たない代わりに半導体で回転を制御するモータです。ブラシレスDCモータはブラシ付DCモータにはない数多くの利点があります。この記事ではブラシレスDCモータの利点について解説します。
ブラシレスDCモータにはブラシがない
ブラシ付DCモータは、回転する電機子と磁石(固定子)を組み合わせ、電機子のコイルに電流を流すためにブラシと整流子を利用しています。
一方ブラシレスDCモータは、回転子、固定子、回転センサー、駆動・制御回路などから構成されています。ブラシと整流子に代わり半導体のスイッチングによって固定子のコイルに流す電流を制御しています。
ブラシレスDCモータは、アウターロータ方式とインナーロータ方式の2種類に分けられます。
- アウターロータ方式
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固定子の外側の、永久磁石が取り付けられた回転子が回転する方式です。磁石を小型化する必要がなく、外側の構造をそのままファンなどの回転軸に活用できるため、モータが取り付けられる装置を小型化できる特長があります。
- インナーロータ方式
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従来のブラシ付DCモータとは構造が逆で、円筒状の永久磁石が取り付けられた回転子が内部で回転して、その外側の同心円上にコイルが配置される方式です。回転軸の慣性モーメントが小さく、モータを小型にできる特長があります。
長寿命・低騒音
ブラシ付DCモータは、ブラシと整流子が常に接触しているため、ブラシと整流子が摩耗する問題が付きまといます。場合によってはブラシの摩耗で発生した粉が飛散したり、火花が出たりする可能性があるのです。
一方ブラシレスDCモータの場合は、機械的な接点がないので摩耗が起こりません。摩耗粉やスラッジの発生がなければ、寿命も長くなるため、定期的にモータを交換するメンテナンス頻度を減らすのに役立ちます。ブラシレスDCモータを基幹部品に搭載することで、モータ要因による製品不具合を防ぎ、製品寿命が延ばせるのです。
モータのブラシモータ特有のブラシと整流子がこすれて発生する摺動音は、接触する部品同士がこすれて発生する摺動音や部品同士の共振、ロータのスラスト方向への振動や移動により発生する音、冷却ファンを内蔵している場合の風切り音、電磁力が固定子鉄心を振動させる電磁気的なうなり音などが想定されます。ブラシレスDCモータの場合、特に摺動音が軽減でき、騒音が発生しにくいでしょう。
ブラシ付DCモータよりも速度制御が安定している
ブラシレスDCモータはブラシ付DCモータと同様に、回転軸に発生する慣性モーメントの影響が無視できません。慣性モーメントは機構と搬送物の両方に発生し、質量や外形、長さに比例します。
モータの回転し始めは起動トルクが大きく、安定して回転し続けているときよりも多くの電流が必要となるため適切に制御しなければなりません。また、シャフトが回転する際、一部のエネルギーは熱や振動になって損失されます。
しかし、ブラシレスDCモータは、磁気センサーであるホールICからのフィードバック制御を行いモータの状態を確認しています。モータへの印加電圧を調整して負荷が変化した場合にも回転数を一定に保つことが可能で、ち密な速度制御ができます。
電磁ノイズが少ない
製品開発において、部品選定時にいかにEMC対策ができるかは重要なポイントです。
ブラシ付DCモータの場合、ブラシと整流子の接点が切り替わる際に、強い火花が出てノイズになる場合があります。ノイズは電気信号と同じ電磁エネルギーのため、適切に制御できなければ他の電子部品や機器が誤動作したり機能が低下したりと障害のもとになるのです。
なお、ブラシレスDCモータの電流は半導体で制御されています。電磁ノイズが発生しにくいため、ブラシ付きDCモータよりもエネルギー損失やノイズが少なく変換効率がよいといえます。
省エネが可能
モータの重さは、モータを使用する製品自体の軽量化と関連する重要な要素です。ブラシレスDCモータはブラシ構造が不要となるため、構造上の自由度が高く小型・軽量化できる余地があります。部品が小さければモータを回転させるのに必要なエネルギーも少なくなります。
また、世界で使用される全電力量の40%~50%がモータだとされているなか、同じ回転エネルギーを得るためのモータのエネルギー変換効率が高ければ環境負荷の低減にも貢献可能です。
ブラシレスDCモータの長寿命で安定的に制御できる、電磁ノイズが起きにくいなどの特長は部品を安定制御するのに欠かせない要素です。ブラシレスDCモータを使用する家電やパソコンなどの長寿命化に役立ちます。
なお鉛や六価クロムなどを除いたモータを使うことで、製品全体の環境負荷が下げられます。
製品設計に対応した豊富なバリエーションが作れる
ブラシ付DCモータの場合は、ブラシと整流子という不可欠な機構があるのに対して、ブラシレスDCモータの場合は制御回路の配置場所や大きさは選択・調整の余地があります。設計する機構の空間条件により偏平なロータ、外側にロータを配置した設計、細長い形状など、用途に適応した設計が可能です。
ブラシレスDCモータの利点を設計に活かそう
ブラシレスDCモータは、ブラシ付DCモータのようにブラシと整流子を使う代わりに、半導体スイッチング素子として転流素子を使う仕組みです。しかし、モータからブラシをなくすことで機械的な接点がなくなり多くのメリットが生まれます。ブラシレスDCモータの選定に迷った際はぜひこの記事を参考にしてください。
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