ブラシ付きDCモータとブラシレスDCモータの違いを解説

  • 自動化

  • 医療・福祉

  • 環境

  • 車載

2021年10月18日

ブラシ付きDCモータとブラシレスDCモータの最大の違いはブラシの有無ですが、そのほかにも違いがあります。この記事ではブラシ付きDCモータとブラシレスDCモータについて、仕組みや制御にどのような違いがあるのかを解説します。

ブラシ付きDCモータとブラシレスDCモータで、各部を構成するものの違い

モータには固定子と回転子があり、コイルに電流を流す際に得られる電磁力で回転子が回転します。これはブラシ付きDCモータ、ブラシレスDCモータいずれのモータにも同じ仕組みです

ただし、何が回転子、固定子になるのかはブラシ付きDCモータとブラシレスDCモータでは異なります。また、モータを回転させる基本構造としてブラシ付きDCモータはブラシと整流子が必要ですが、ブラシレスDCモータは駆動回路が必要です。

ブラシ付きDCモータ ブラシレスDCモータ
回転子(ロータ) コイルが巻かれた積層鉄心 永久磁石
固定子(ステーター) 永久磁石 コイルが巻かれた積層鉄心
制御方法 ブラシと整流子 磁極センサと駆動回路

ブラシ付きDCモータはコイルが巻かれた積層鉄心が回転子です。回転子が磁界内で回転すると、回転子に付いている整流子も回転し、整流子が接するブラシが替わります。整流子が接するブラシが入れ替わるたびにコイルを流れる電流の向きが切り替わることで、回転子が回り続けてモータが駆動します。ブラシ付きDCモータの回転速度やトルクを制御したい場合には、電圧を調整します。

一方、ブラシレスDCモータは、永久磁石が回転子を構成し、永久磁石が取りつけられた回転子アセンブリ全体が回転します。また、ブラシ付きDCモータではブラシと整流子が実際に接触しますが、ブラシレスDCモータの場合には接点がありません。そこでセンサから取得する磁極位置の情報で電流を流すコイルを切り替えています。

ブラシ付きDCモータとブラシレスDCモータは基本構造が違う

先にご紹介した制御方法の違いについてもう少し詳しくご紹介します。

ブラシ付きDCモータの制御方法

ブラシ付きDCモータでは、回転をブラシと整流子で制御します。固定子に界磁があり、回転子のコイルに電流が流れます。ブラシと整流子が接触するとブラシから整流子を経てコイルに電流が流れ、フレミングの左手の法則の向きに従い電磁力が発生して回転子が動きます。ただし回転が90度に近づくと電磁力の方向が中心を向くため、回転が止まってしまいます。

そこで、回転位置が90度になる直前でいったん電流を止め、慣性モーメントでさらに90度回転させたあと別の向きの電流を流します。これにより90度から反対側の270度付近までの回転を維持します。このように回転に伴い回転子が180度回るごとに、コイルを流れる電流の方向を交互に切り替えて回転を維持しています。

そしてコイルの形状や巻数、界磁の磁束密度を変えずにトルクや回転数を制御するには、コイルに流れる電流を調節します。電流が大きければトルクが大きくなり回転数がより早くなるのです。

ブラシレスDCモータの制御方法

ブラシレスDCモータの場合は、ブラシ付きDCモータとは逆に固定子側にコイルを巻いた鉄心などを配置して制御を行います。

例えばアウターロータ型の3相ブラシレスDCモータの場合、3個の固定子コイルに6個のスイッチから構成されます。各々のスイッチに電流を流すとコイルにN極とS極が発生し回転子が動きます。電流を制御して固定子側の磁極が次々に遷移すると、磁気の吸引力と反発力を使い回転子が高速回転します。

ブラシレスDCモータの制御回路には「モータの回転数を検出する磁極センサ」「回転数の指令と現時点の回転状況を比較・判断する回路」「駆動すべき電圧を計算する回路」「実際に電圧を印加させる駆動回路」などが含まれています。

ブラシ付きDCモータ(左)とブラシレスDCモータ(BLDC インナーローター方式 右) ブラシ付きDCモータ(左)とブラシレスDCモータ(BLDC インナーローター方式 右)

耐久性やノイズへのリスクが違う

ブラシ付きDCモータにあるブラシと整流子は、直接接触することから使用するにつれ徐々に摩擦していきます。さらに電気的ノイズ、火花放電の発生、騒音のリスクがあり接点は高回転に対応しづらいです。初期コストを抑えたい場合に、ブラシ付きDCモータは役立ちますが、定期的に点検をしたり部品交換をしたりというメンテナンスが必要なため、将来的なコストが高まる可能性があります。

また、ブラシレスDCモータはブラシがないため、ブラシの摩耗やブラシの接触が原因のノイズが起きません。ブラシ付きDCモータに比べて、正弦波駆動と呼ばれる静かで低振動、低ノイズな回転方法であることから制御しやすい特徴があります。そのため、長寿命で高効率なモータが求められる場合には、ブラシレスDCモータが採用される傾向があります。

ロータ位置検出の要否が異なる

ブラシ付きDCモータは、電流の切り替えができれば、基本的に回転子がどの位置にあるかを検出する必要はありません。

一方、ブラシレスDCモータの場合は、回転子の位置ごとに回転子側の電極を制御するため、回転子の位置を検出することは必須です。位置を検出することで、より回転数やトルクを安定させるメリットがあります。

まとめ

ブラシ付きDCモータにはブラシと整流子があり、ブラシレスDCモータではそれとは異なり制御回路があります。また固定子と回転子では、「コイルが巻かれた積層鉄心」「永久磁石」の組み合わせもブラシ付きDCモータとブラシレスDCモータとでは逆になっています。それぞれの違いを踏まえて目的にあったモータを選びましょう。

ブラシレスDCモータでお客様の課題を解決

ASPINAのブラシレスDCモータは、モータ単体だけでなく、駆動・制御系から機構設計までを含んだシステム部品としてご提供しています。試作から量産、アフターサポートまで一貫して対応しています。
さまざまな業界、用途、お客様製品に求められる機能や性能、お客様の生産体制に合わせて、最適なご提案をいたします。

具体的なご要望や要求仕様のあるお客様だけでなく、次のようなお困りごとの段階でもお声掛けをいただき、開発から量産にまで対応しています。ぜひ、お気軽にご相談ください。

どんなモータが必要か、分からない
  • 「新製品の開発が初期段階であり、具体的な仕様や設計図まで作りこんでいない。しかし開発を今後スピーディに進めるためモータについてのアドバイスが欲しい」
  • 「モータに通じた専門家が社内におらず、理想の動きを実現するために必要なモータの知見がない」
モータとその周辺部分をまとめて設計するのが難しい
  • 「当社のリソースは商品企画やコア技術の開発・設計に投入したい。それ以外のモータとその周辺部分の設計・開発をまとめて行ってくれる会社がないか」
  • 「モータを変更すると他の機構部品の設計も変更せねばならず、工数と時間がかかりそう」
用途に合った既製品が見つからない
  • 「自社製品に合ったモータのカスタム品が欲しいが、取り引きしているモータメーカーに断られた」
  • 「モータをきめ細かく制御したいが、既製品モータでは対応できないので、あきらめるしかないのか」

ぜひ、お気軽にご相談ください。

お問い合わせ

用語集、FAQへのリンク

Contact us for more information

  • 新規引き合い
  • 試作品
  • 置き換え
  • カスタム
  • 要求仕様
  • 資料請求
  • サポート
  • その他

お問い合わせ