どのように制御する?DCモータの速度制御
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2021年3月29日
DCモータは、直流電流によって動作するモータです。その用途は幅広く、家庭向け電化製品や自動車、工場プラントなど、さまざまなシーンで活用されています。私たちにとって欠かせない存在といえるでしょう。
一方で、DCモータは「どのように速度を制御するのかわからない」という方も少なくありません。ここでは、DCモータの速度制御の方法について、わかりやすくご紹介します。
DCモータとは
そもそもモータとは、電気を利用して回転運動を生み出し、電気エネルギーを機械的動力へと変換するための機器です。モータは、主に以下の3つの種類に分けられます。
- DCモータ
- ACモータ
- ステッピングモータ
ACモータは交流電流で回転するモータ、ステッピングモータはパルス信号により回転するモータです。そしてDCモータは直流電流で回転するモータです。DCモータの特徴には次のようなものがあります。
- 起動トルクが大きく高速回転が可能
- 回転数を印加電圧により自由にコントロールできる
DCモータはさらにブラシ付きDCモータとブラシレスDCモータに分類されます。ブラシ付きDCモータは回転子にコイルが使われ、整流子とブラシの機械的な仕組みによってコイルに流れる電流の向きを切り替えます。整流子とブラシが消耗品であるためメンテナンス頻度が高く、電気ノイズや騒音が発生するものの、構造がシンプルで、速度制御しない場合は駆動電子回路が不要であることが特徴です。
一方ブラシレスDCモータは回転子に永久磁石が使われ、ブラシと整流子がありません。そのため、駆動には駆動回路が必要です。また、「メンテナンス頻度が少ない」「静音性が高い」「長寿命」といった特徴があります。
DCモータの特性
DCモータはACモータとは異なり、回転数を簡単に変えることができる非常に便利なモータです。では、実際どのようにして回転数を変えるのでしょうか。まずDCモータの特性から見ていきましょう。
DCモータの特性は横軸にトルク、縦軸に回転数で表されたトルクカーブで表され、右下がりの特性グラフになります。負荷が無い時の回転数が最も高く、停止した時のトルクが一番高くなる右下がりの特性になります。
回転数とトルクは、このトルクカーブ上を負荷によって移動します。例えば、トルクT0でω0の回転数で回っているモータがあるとします。このモータの負荷トルクを大きくしてT1にすると、回転数はトルクカーブ上を移動してω1になります。さらに負荷トルクを増やしてT2とすると、回転数はω2となります。
トルクと電流の関係を見てみると、トルクは電流と比例関係にあることがわかります。モータの回転数や駆動電圧を変えても同じ関係を示し、比例定数はモータ固有の値を持ちます。このため、モータを流れる電流を測定するだけでモータのトルクがわかるのです。
モータの駆動電圧を変えるとどうなるのか?
では、DCモータを駆動させる電圧を変えてみるとトルクカーブはどうなるでしょうか。図は電圧を変化させたときのトルクカーブです。駆動電圧を2倍にすると、無負荷回転数(負荷を加えない時の回転数)も2倍に、起動トルク(ロック時のトルク)も2倍になります。つまり、電圧を上げるに従い、トルクカーブは上に平行移動します。DCモータはモータにかける電圧を変えることで、トルクカーブを自由に変化させることができるのです。
DCモータを必要な回転数で回すには?
実際に任意の負荷トルクで駆動したいとき、回したい回転数でモータを回すにはどうすればよいのでしょうか。
DCモータは駆動電圧を変えるとトルクカーブが平行移動します。つまり、駆動電圧を変化させればよいのです。例えば、T0の負荷トルクが掛かっているときにω1の回転数で回したいとします。V4の駆動電圧では低すぎてω2の回転数、V0の駆動電圧では高すぎてω0の回転数になります。その間のV3の電圧で駆動すると、ちょうどω1の回転数が得られます。
このように、DCモータは、電圧を調整することで、どんな負荷トルクでも任意の回転数で回すことができます。
駆動電圧の制御方式
モータ駆動電圧を変化させるには、リニア方式とPWM方式があります。
リニア方式はモータと直列に可変抵抗をつなぎ、抵抗値を変化させることでモータにかかる電圧を変えます。直列につなぐ可変抵抗には半導体のトランジスタなどが用いられますが、この抵抗(半導体)の発熱が大きく、効率が悪いので近年はあまり用いられなくなりました。
これに代わって登場したのがPWM方式です。トランジスタやFETなどの半導体スイッチで高速にオンとオフを繰り返し、オンとオフのパルス幅を変化させることで電圧を変える方式です。効率の良さから、現在では主流の方式です。
モータの回転数制御
このように、DCモータは回転数を自由に変えることができるモータです。ただし、一定回転で回し続けるには工夫が必要です。モータにかかる負荷トルクは、負荷の状態や温度、湿度、経時変化等によって変化してしまいます。そのため、一定の電圧でモータを駆動するだけでは、負荷変動により回転数が変わってしまうのです。
負荷が変動しても回転数を一定にするには、負荷変動に応じて駆動電圧を絶えず変化させる必要があります。例えば、下のグラフのように回転数ω0、トルクがT1で回転しているモータの負荷トルクが変化してT0へ減った時は、駆動電圧を下げてV0とすることで同じω0で回転させることができます。逆にトルクが増えてT2になっても、駆動電圧をV2へと上げることで回転数をω0に保つことができます。
回転数はモータに取り付けられたセンサーで測定します。測定された回転数値と必要な回転数との差を計算し、回転数が低ければ駆動電圧を上げ、回転数が高ければ駆動電圧を下げるように駆動電圧を制御します。これにより、回転数を一定に保つことができるようになります。駆動電圧の制御は、以前はオペアンプなどのアナログ回路で構成されていましたが、近年はマイクロコンピューターが使用されるようになりました。
DCモータの回転数制御の回路構成
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回転数センサー
モータの回転数に合わせた信号を出します。ホール素子、エンコーダ、タコジェネレータなどが使用されます。
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回転数検出回路
回転数センサーの信号からモータ回転数を計算します。
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回転数指令
回転数の指令値を出します。
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比較回路
指令回転数と測定回転数の差を計算します。
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駆動電圧計算回路
回転差計算値からモータ駆動電圧を計算します。
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駆動回路
駆動電圧信号を基に、モータに加える電圧を調整する回路です。
DCモータは負荷が変化しても回転数を一定に保つ回転数制御が可能であり、安定した動作を可能とします。また、マイクロコンピューターにより多くの制御動作が可能なモータです。DCモータは制御性の良さを利用して、様々な用途に使用されています。
DCモータは回転数を簡単に変えられる、便利なモータ
DCモータとは、直流電流で回転するモータで、ACモータとは異なり回転数を簡単に変えることができます。DCモータのトルクカーブは負荷トルクを上げると回転数が下がる特性を示し、また、このトルクカーブは駆動電圧に応じて平行移動します。よって、DCモータは電圧を調整することで、どんな負荷トルクでも任意の回転数で回すことができます。
モータ駆動電圧を変化させるには、リニア方式とPWM方式があります。近年ではその効率の良さからPWM方式が主流です。PWM方式では半導体スイッチで高速にオンとオフを繰り返し、オンとオフのパルス幅を変化させることで電圧を変えます。
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