人工衛星用リアクションホイールとキューブサット用リアクションホイール
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宇宙
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小型人工衛星・CubeSat
2023年2月22日
リアクションホイールとは
リアクションホイール(reaction wheel)は、人工衛星の方向を変化させる姿勢制御に使われている部品です。これは、フライホイールに与えるトルクの反力により、角運動量を発生させる電気アクチェータの一種です。
燃料を消費するスラスターと違い、電気エネルギーのみで姿勢制御が可能であり、太陽電池などによって電源が得られれば、駆動力を長期にわたって確保できます。宇宙空間で長期間、単独運用される人工衛星ではスラスターよりも有利です。
しかし、リアクションホイールは、仕組み上人工衛星を回転させるための制御のみ可能で、直線加速度を加える制御を行うことはできません。また、蓄積できる角運動量に上限があり、スラスターや磁気トルカなどの別の姿勢制御機器での補完が必要です。
人工衛星では、3軸(X,Y,Z)の制御のためにリアクションホイールを最低3機搭載する必要がありますが、故障しても機能を失わないように4機搭載することが一般的です。そのため、小型・軽量で、高角運動量の性能が求められています。また衛星に搭載される観測装置の高性能化が進み、リアクションホイールが駆動することによる発生する振動(擾乱)が観測機器の性能低下につながるため、低振動(低擾乱)化が強く求められています。
リアクションホイールの構造
リアクションホイールは、1つの回転軸に対して、1つのフライホイール(円盤状のはずみ車)を電動モータ(ブラシレスDCモータ)で回転駆動する構造になっています。フライホイールは電動モータと一体として作られます。
フライホイール
フライホイールは、軸を中心に回転するロータです。角運動量の性能を上げる場合、回転半径が大きい外周部に質量を集中し、回転半径が小さい内周部は軽量化が必要です。
ベアリング
ベアリングはフライホイールを支え、最小の摩擦で回転できるようにします。 フライホイールには、高精度・安定性そして宇宙環境耐性を備える低摩擦ボールベアリングが使用されています。
モータ
モータは、ホイールを回転させるために必要なトルクを提供します。低振動化のためブラシレス DC(BLDC)モータが使用されます。小型で角運動量を大きくするため、高速、高効率モータになっています。
制御電子機器
制御電子機器は、ホイールの速度を調整し、衛星の制御システムと通信するために使用されます。 これらには、パワーエレクトロニクス、デジタルコントローラ、およびリアクションホイールを操作するために必要なその他のコンポーネントが含まれます。
ハウジング
ハウジングは、ホイールアセンブリ、ベアリング、モータ、および制御電子機器を収容します。 質量を最小限に抑え、内部のコンポーネントを保護するために、通常はアルミニウムや複合材料などの軽量材料で作られています。
人工衛星の分類と使用されるリアクションホイール
人工衛星は、一般的に衛星の重量によって分類されます。
衛星の重量 | 分類名称 |
---|---|
0.01~0.09kg | Femto |
0.1~1kg | Pico |
1.1~10kg | Nano |
11~200kg | Micro |
201~600kg | Mini |
引用元:JETRO米国における宇宙政策・産業動向及び小型衛星市場の調査(2022/03)
(衛星の区分は、文献によって変わる場合があります)
近年、数が多くなっている小型人工衛星は、Nano~Microサイズの衛星が該当します。
このうち、1~50kgの質量で、大きさが10 x 10 x 10cmのキューブ状の形状を1Uと定義する人工衛星は『キューブサット(CubeSat)』と呼ばれています。キューブサットは、1U形状を複数組み合わせる構造で3U、6U、12Uという形状が一般化されており、それに合わせたコンポーネントが複数販売されているため、低コストで迅速な開発と打ち上げが可能な人工衛星です。
それらの衛星で使用されるリアクションホイールも、そのサイズに適したスペックが必要です。
必要な角運動量として、おおよそ以下のものが選定されます。
衛星のサイズ | 衛星の重量 | リアクションホイールの角運動量 |
---|---|---|
CubeSat | 1~50kg | 1.0~100 mNmsが目安 |
MicroSat | 100kg 級 | 0.1~0.8Nmsが目安 |
MiniSat | 200kg 級 | 0.9~4.0Nmsが目安 |
リアクションホイールは、角運動量の他にトルクや消費電力も使用する人工衛星に合わせて選定することが求められます。
ASPINAでは小型人工衛星/キューブサット用のリアクションホイールを開発中
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詳しくは技術情報のページをご覧ください。