国内の高効率モータの制度
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2021年3月29日
我が国の省エネ法(エネルギーの使用の合理化等に関する法律)では、電力量を削減するために、すでに市場に出荷されている製品のうち最もエネルギー効率が高い製品の性能を製品分野ごとに目標とする「トップランナー制度」が定められています。
本ページでは、この制度の趣旨から、高効率モータの産業機器としての社会的位置づけをみていきます。
トップランナー制度とは
まず前提として、エネルギー消費効率の基準の決め方には、以下の3つの方式があります。
- 最高基準値方式(トップランナー制度)
- 基準値策定時点で最も高い効率の機器の値を上回ることを目標とした方式です。省エネルギーへの期待と役割が大きくなるにつれて、環境基準をより厳格にし、省エネ効果を高める狙いで導入されました。
経産省資源エネルギー庁や環境省が、削減を目指す様々な製品に対して、その生産量や消費量などに応じたCO2排出係数などの基準値を設定します。その際、市場に存在する商品のうち、最も省エネ効率の高い製品の数値を参考に、将来の技術革新を見込んだ高い目標値が設定されます。
そのため製造事業者に、よりエネルギー効率の高い機器を開発しようとするインセンティブを与えやすいわけですが、同時に、高い基準値を達成するための新たなコストを強いることにも繋がるため、発売後の売上予測等を鑑みた適切な基準値の設定が必要となります。 - 最低基準値方式(MEPS = Minimum Energy Performance Standard)
- 対象となる機器の全ての製品が超えるべき最低の基準値が定められる方式です。達成できない場合は、その製品が出荷できなくなる等の措置が取られます。一見分かり易い方法ですが、全ての製品が超えるべき値を設定するには経済妥当性について評価を十分に行わねばならず、検討に長期間を要すため、省エネ効果を実現するまでには時間がかかることが課題です。
- 平均基準値方式
- 対象となる機器の平均値が基準を満たすことを目標としています。省エネの目標値は、製造事業者からの情報に基づいて任意に決めたもので、省エネ法設立時に取り入れた方式です。この方式では、目標年度に対象とする機器等が製造事業者ごと、区分ごとの出荷台数の加重平均で達成すれば良く、省エネ性能よりも経済合理性が優先される傾向が強いともいえます。従って、この方式は製造事業者等の目標基準値としては機能しますが、省エネ効果に強い影響力があるとは考えられません。
特定機器とは
トップランナー制度では対象となる製品を「特定機器」として指定しています。特定機器の選定基準は、下記の3つが基本になります。
- 日本で大量に使用されるもの。
- 使用時に相当量のエネルギー消費があるもの。
- その機械器具に係わるエネルギー消費性能の向上を図ることが重要であるもの。
平成29年4月現在、以下の32品目が特定機器として指定されています。
- 乗用自動車
- エアコンディショナー
- 照明器具
- テレビジョン受信機
- 複写機
- 電子計算機
- 磁気ディスク装置
- 貨物自動車
- ビデオテープレコーダ
- 電気冷蔵庫
- 電機冷凍庫
- ストーブ
- ガス調理機器
- カス温水機器
- 石油温水機器
- 電気便座
- 自動販売機
- 変圧器
- ジャー炊飯器
- 電子レンジ
- DVDレコーダー
- スイッチング機器
- ルーティング機器
- 複合機器
- プリンター
- 電気温水器期(ヒートポンプ式給湯器)
- 三相誘導電動機
- 電球型LEDランプ
- 断熱材
- サッシ
- 複層ガラス
- ショーケース
トップランナーモータの対象範囲
前述の特定機器の中で、モータ単体で指定されている三相誘導電動機は、主に産業分野で幅広く利用されています。
下記は「総合資源エネルギー調査会 省エネルギー基準部会 三相誘導電動機判断基準小委員会」でまとめられた、「トップランナーモータ」として規定されている三相誘導電動機の条件です。これらは日本国内で製造されているもの、海外から輸入されたものに関わらず適用されます。
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定格周波数又は基底周波数が50Hz±5%のもの、60Hz±5%のもの、又は50Hz±5%及び60Hz±5%共用のもの
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単一速度のもの
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定格電圧が1000V以下のもの
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定格出力が0.75kW以上375kW以下のもの
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極数が2極、4極又は6極のもの
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使用の種類が以下の(ア)又は(イ)の条件に該当するもの
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(ア)電動機が熱的平衡に達する時間以上に一定負荷で連続して運転する連続使用(記号:S1)のもの
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(イ)電動機が熱的平衡に達する時間より短く、かつ、一定な負荷の運転期間及び停止期間を一周期として、反復する使用(記号:S3)で一周期の運転時間が80%以上の負荷時間率をもつもの
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商用電源で駆動するもの
トップランナーモータの制度は、日本電機工業会(JEMA)により、2015年度を目標年度として、目標基準値が定められました。目標年度とは、機器の製造事業者、輸入事業者が特定機器について、目標基準値を達成すべき年度、すなわち規制が開始する年度を指します。 また、目標基準値は、JIS C 4034-30:2011 単一速度三相誘導電動機の効率クラス(IEコード)のプレミアム効率(IE3)相当となっています。
また、上記32品目の内、自動車や家電などには多くのモータが使われています。これら製品の省エネ基準を達成をするためには、組み込まれたモータの高効率化が重要な要素となります。詳しくは「小型の高効率モータ」をご覧ください。
モータの効率クラスの規格について
モータの効率については、国際電気標準会議で規定されています。 より詳しくは「海外の高効率モータの制度」で解説しています。 日本国内は、日本工業規格JIS C 4034-30にて規定されています。これは国際規格であるIEC60034-30に準拠しています。
モータの効率基準値は、下記4つの効率クラスに分類されています。
- IE1:標準効率
- IE2:高効率
- IE3:プレミアム効率
- IE4:スーパープレミアム効率(参考レベル)
高効率モータの設計について
高効率モータの設計にあたっては、トップランナー制度の元、モータ単体で指定されている「トップランナーモータ」を使用する場合と、モータ単体では指定されていないが、特定機器に求められる性能を実現する場合では、設計や設置時の検討事項が異なります。
トップランナーモータを利用する場合
トップランナー制度に関わる産業用モータの場合は、トップランナーモータに置き換えることでモータ単体の高効率化が狙えます。
生産設備の更新などで、これまで使用していた標準的な効率のモータをトップランナーモータに置き換える際には、下記の点に注意する必要があります。
- モータの寸法が大型化する場合がある。
- モータの定格回転速度がより高くなる傾向にある。
- 始動電流が大きくなる傾向にある。
- 力率が低下する。
トップランナー機器に指定された特定機器にモータを組み込む場合
トップランナー制度で指定されていない小型モータに高効率を要求する場合、一般にブラシレスDCモータが使われます。また、モータ単体だけでなく、システムとして、装置全体の設計、インバータ制御方法などを検討することもエネルギー効率の向上に重要なポイントとなります。
小型高効率モータについては、「小型の高効率モータ」のページにて設計ポイントを掲載しています。
私たちASPINAは小型モータの高効率化について、ご質問、ご相談を承っています。詳しくは「ASPINAの高効率モータ」をご覧ください。