AMRを狭い通路で安全に自律走行させる。薄型高精度のインホイールモータが実現
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ラベル識別・在庫管理システム開発・製造C社様
狭い通路内で買い物客・従業員などに接触せず作業させるには
国内外の多くの企業が、店舗内や施設内を巡回するサービスロボットやAMRの実用化に取り組んでいます。店舗やオフィスでは、狭い通路を人や物がランダムに行き交います。そのような場所で人の操作を加えず安全で適切に作業を行うことが、サービスロボットやAMRの開発課題の一つとなっています。
店舗の在庫・棚管理システムを開発・製造するC社でも、陳列棚の管理を省力化するAMRの開発を進めていました。C社では、アメリカ全土で約3,000店舗を有する大手スーパーマーケットチェーンにAMRを含む在庫管理システムの提案を行おうと考えていました。
単調な棚管理の仕事を人に代わってAMRが行うことで、タイムリーなチェックで棚欠品による売り逃しを減らす、店員がより多くの時間を接客にあてられる、などの効果が期待できます。これにより来店客の店舗体験が向上し店舗の売り上げアップが図れます。またAMRによる省力化で、売り場従業員にかかる費用を抑制することにもつながります。C社は、新しく開発するAMRは店舗と従業員のパフォーマンスを、収入と支出の両面から改善すると考えていました。
一方でC社は、安全性を十分に確保したAMRを開発する必要があると考えていました。広大な床面積を持つ倉庫とは異なり、店舗は棚の間の通路が通常は狭く、買い物客やショッピングカートなどがランダムに行き交います。このため、AMRが人やカートなどに接触し、その結果買い物客にケガをさせるリスクがあります。
例えば棚間の通路の幅が1.8mのところを、カートを持った買い物客が棚を見ながら歩いているとすると、AMRが通れるのは通路の半分以下の幅となることもあります。AMRはその細い隙間を、棚や人、カート、柱などに接触・衝突せずにすり抜けて走行し仕事を行うことが求められるのです。
当時探したインホイールモータでは、開発中のAMRの小型化には不十分だった
「自律して動く」「人の代わりに作業をする」はAMRには当たり前の機能ですが、加えてC社では、買い物客や従業員に対する安全対策も重視していました。
このため、買い物客に直接接触したり、カートなど通路にある物に接触してそれが買い物客に当たったりする、といったことを避ける方法を考案せねばなりませんでした。
狭い通路で人や物と接触せず効率的に作業させる対策の一つは、AMRの小型化です。C社では特に足回り部分の幅と奥行きを狭くしなければならないと考えました。足回り部分に収容されるホイールや駆動系、動力系の部品は電子部品などに比べると大型のため、AMRの他の部位に比べ肥大化しやすいためです。
ホイール、ギア、モータを別々に自社で用意して組み立てる設計では、モータシャフトからホイールまでの距離が長くなり、モータ、ギア、ホイールの全てを収容する足回り部分が大きくなってしまうことが、C社では分かりました。そのサイズのAMRが店舗内の狭い通路を走行すると、買い物客の行動を阻害したり、接触したりする可能性が高いと判断しました。
そこでC社は、モータとギアが一体化したインホイールモータの導入の検討を開始しました。しかし、当時選定候補だったインホイールモータは比較的幅が厚いことや停止精度に課題があることが分かりました。このため、自社のニーズに合うようにインホイールモータをカスタム開発してくれる企業を探したのですが、なかなか見つかりませんでした。
ASPINAのインホイールモータで、様々な点からAMRの安全性が向上した
ASPINAは、以前からC社にモータを供給していましたが、このプロジェクトの話を聞き、新たなインホイールモータを提案することにしました。
当社は、モータや関連製品のカスタマイズを得意とし、多くのお客様にカスタム品を提供しています。今回も、原理試作から最終製品まで、お客様のニーズに合ったインホイールモータを開発する提案を行いました。
ASPINAは、精密モータやギアの設計を長年にわたって行っています。その経験に基づく専門技術を有する設計技術者が、ホイール内部に高効率ブラシレスDCモータと高精度・高減速比の遊星歯車を収容する構造を編み出しました。これにより、C社の要望を満たす車輪直径165mm、全幅114mm、停止精度+/-3mmを実現可能な、50W薄型インホイールモータの開発に成功しました。
インホイールモータが大幅に薄型になったため、インホイールモータの間のスペースに大容量のバッテリーを収納することができました。これにより足回り全体のサイズを小さくすることができただけでなく、バッテリーの取り付け位置が低くなったためAMR全体の重心が下がり、安定性が増しました。さらに、高精度な歯車で停止精度が向上したことで、製品の安全性がより高くなりました。
C社の要求は安全性にとどまらず細部かつ多岐にわたりました。当社はC社と綿密な打ち合わせを定期的に行い、C社の要求の真の意図を理解し、かつそれに応じた様々な提案を行いました。こういったことを継続したことで、より顧客満足度の高い製品に仕上がりました。
ASPINAのインホイールモータで、革新的なアイデアを製品化する
このようにしてC社のAMRは、通路にいる買い物客の邪魔にならない、スリムなデザインに仕上がりました。
C社ではこのAMRを含む総合的な在庫管理システムを、スーパーマーケットチェーンに営業展開しました。このシステムにより、来店客の店舗体験と、棚管理や従業員管理といった店舗オペレーションとが、大きく変わることになります。試算では、棚管理のうち単純作業を自動化することで、1店舗あたり年間約3万ドルの従業員工数を、収入面に寄与する高付加価値業務に振り向けることが可能と推測されます。このように収入と支出の両面で、店舗の経営管理指標が改善されることが期待されます。
C社のプロジェクトマネージャー様からは「製品化までのご協力と貢献に大変感謝しています。今後、協業を更に深めていきたいです」という感謝の声をいただきました。
C社はこれからも棚管理用AMRを進化させる計画です。ASPINAは製品・サービスの提供を通じてC社のビジネスにさらにご支援していきます。
課題
- 店舗内の狭い通路を、人や物に接触せずに安全に運行できるAMRの実用化が急務
- ホイールとモータ、ギアを自社で別々に用意し組み立てるように設計すると、AMRの足回り部分のサイズが肥大化
- 当時市場にあったインホイールモータでは要求を実現できず、カスタム対応してくれるメーカーが見つからなかった
対応
- ホイール、ブラシレスDCモータ、遊星歯車の機構設計を最初から行い、薄型で停止精度の高いインホイールモータを開発
- 大容量バッテリーを収容するスペースも生み出し、足回りを小さくでき、かつAMRの低重心化に寄与
- 安全性だけでない細かな要求を聞き取りその真の意図を理解することで、顧客が本当に求めているニーズに合ったインホイールモータが完成
Exhibition information
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2024年11月19日
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2024年10月15日
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2024年10月8日