小型化・低振動化で療養生活を快適に - 医療機器用コンプレッサー

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患者のQOLを重視する医療機器への搭載を目指して

「人工呼吸器に使える、低振動で低騒音な医療用コンプレッサーを作って欲しい」。アメリカのベンチャー企業からその相談を受けた時、MEビジネスユニットのメンバーはASPINAの新しい挑戦の予感がしました。

医療業界では在宅治療のニーズが高まり始め、家庭でも使える医療機器向けに小型で低振動・低騒音な医療機器用コンプレッサーの開発が求められていました。ASPINAでは2012年頃から、空気を吸い込んで高濃度の酸素を排気する酸素濃縮器向けに、低振動・低騒音をコンセプトにした医療機器用コンプレッサーを製品化してきました。

医療系ベンチャー企業として新規に製品開発を手がけようと考えていたお客様は、ASPINAが医療機器用コンプレッサーの低振動・低騒音を実現した技術力を高く評価し、医療機器に搭載するコンプレッサーの開発を相談されました。お客様がASPINAのコンプレッサーを使って商品化しようとした医療機器は、「病院と在宅の双方で使用できる人工呼吸器」でした。

医療業界では、「クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)」が重視され、「患者が自身の尊厳をより保ち得る生活の実現を目指した援助が重要である」という考え方が広がっています。在宅でも使用できる人工呼吸器はQOLを向上する上で重要な役割を持ち、持ち運び易いように小型であることの他にも寝室で使用する際に睡眠の邪魔にならないよう、低振動・低騒音という性能も求められます。

ASPINAの酸素濃縮機向け医療機器用コンプレッサーは、4気筒にすることで低振動・低騒音を実現していました。初めて人工呼吸器の開発に挑戦するお客様は、このコンプレッサーならば小型で低振動・低騒音を実現する人工呼吸器のニーズを満たしてくれると確信されたそうです。

4気筒で低騒音に、自冷ファンでお客様機器を小型化

当時、医療用コンプレッサーの構造はシリンダーを1つまたは2つ搭載する1気筒や2気筒タイプが主流でした。そこでASPINAは、シリンダーを4つ搭載する4気筒タイプのコンプレッサーを新たに開発しました。このコンプレッサーでは4気筒を2気筒ずつ同期させています。コンプレッサーの振動や騒音は、シリンダー内のピストンの往復運動によって発生しますが、この仕組みでは一方の2気筒ペアが発生する振動をもう一方の2気筒ペアで相殺させ、振動と騒音を抑えます。この構造によって高出力でありながらも低振動・低騒音な、酸素濃縮機向け医療機器用コンプレッサーが開発できました。

お客様は、この酸素濃縮器用のコンプレッサーが人工呼吸器にも使えるのではないかと検討を始めました。しかし、実際にコンプレッサーをお客様が開発した人工呼吸器に組み込んだところ、設計時に想定していた以上に発熱することがわかりました。人工呼吸器に付けられた冷却ファンでは排熱が追いつかず、人工呼吸器の内部温度が上昇してしまったのです。

コンプレッサーで最も熱を持つのは、コイル部とシリンダーです。人工呼吸器内部の温度上昇を抑制するには、これらの部分を効率よく冷却する必要がありました。一方で、「病院と在宅の双方で使用できる人工呼吸器」の大きさは限られており、冷却用部品で人工呼吸器内部の空間を多く占めるわけにはいきません。

ASPINAではこの課題を解決するために、冷却用のファンをコンプレッサー自体に組み付けることにしました。これによりコンプレッサーを直接冷却できると同時に、人工呼吸器本体にファンを取り付ける必要が無くなるため、人工呼吸器全体の小型化が可能になります。

さらにASPINAは、効率の良い冷却方法を追究するため、異なる大きさや形状のファンの試作品を作り、最適なファンの種類と位置を検証する実験を繰り返しました。その結果、コンプレッサーのモータ上部にファンを組み付ければ最も効率が良いことが判明し、コンプレッサーの上から下へ空気を流す構造を採用しました。

低振動・低騒音、そして人工呼吸器全体の小型化を実現する医療用コンプレッサー

医療機器分野における顧客ニーズを真に理解するASPINA

ASPINAは製品開発において、真の顧客要求を深く検討します。今回のコンプレッサー開発では「今の医療業界にはどのようなニーズがあるのか」「既存の医療用コンプレッサーにはどのような課題があるのか」といった点から、外部の技術コンサルタントにアドバイスを求めました。その結果、人工呼吸器用の低振動・低騒音のコンプレッサーに4気筒方式を採用するというアイデアを見出しました。

ASPINAは、本来の顧客価値を追求した製品開発を行います。コンプレッサーの小型化だけでなく、コンプレッサーを冷却させるファンをコンプレッサー本体に組み付けることで、本来必要とされる冷却ファンを不要にして人工呼吸器全体を小型化しました。

医療機器用コンプレッサーの小型化に貢献します

ASPINAは今後も、市場の要求に応じてさまざまな製品の開発にチャレンジします。医療用コンプレッサーの市場を見ても、在宅治療を積極的に進めていく中で、多様なタイプの製品が求められるようになってきました。最近では、低振動・低騒音という特徴だけでなく、機動性を重視した医療用コンプレッサーも必要とされています。ASPINAでは、そのようなニーズにもお応えできる医療用コンプレッサーの開発も始めています。

在宅治療を積極的に進めていく中で、多様なタイプの製品が求められる

例えば、家庭用として持ち歩きが可能な医療機器に組み込める、小さくて軽い医療用コンプレッサーが欲しいといったニーズに対しては、よりシリンダーの少ないコンプレッサーを開発しています。部品点数が少なくなるので軽量化、小型化が可能になるというメリットがあります。

ASPINAは今後も新しいアイデアで、医療業界に変革をもたらします。

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