ASPINAが追求する高効率化 - PAPR用ブロワ

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ブロワ開発で目指した「一歩先」とは

小型、軽量、高効率、低消費電力。ブロワにおいて、そのすべてを実現することはとても魅力的なことだと思いませんか?あらゆるパーツからムダと損失を取り払うことができれば、それは不可能な話ではありません。
「一歩進んだブロワを開発するには、モータを始め、ファンやケーシング、回路を個別に分析して、性能損失を正確に把握することが重要な第一歩となります」。開発技術本部の臼井は、PAPR(電動ファン付き呼吸用保護具)用ブロワの開発について、こう語り始めました。

粉塵の舞う工場内やバイオ関係の施設内では、PAPRは欠かせない保護具です。作業者の装着したマスク内にフィルタを通した空気を送るバッテリー駆動のブロワを、作業者自身が身に着けることになります。そのため、安全に長時間使用できることはもちろん、重量や振動、音などを抑え、使用者の負担が軽くなるようなブロワでなければいけません。

このユーザー視点での考え方を出発点として、当社は従来品よりも小型軽量、長時間駆動を可能にする技術を結集し、新しいPAPR用ブロワの開発に成功しました。

その開発過程で当社の開発チームは、単なる性能向上でない新しいアプローチを採用しています。

最適なブロワ効率を見つける、新しいアプローチと手法

「従来製品のブロワは幅広い流量に対応したもので、真に必要な流量の範囲内で効率よくブロワが働く、という理想とはかけ離れていた」(臼井)。
PAPRは、人間の呼吸を補助するためにブロワで空気を送り込むことで、フィルタ着用の息苦しさを軽減します。ただ、送り込む空気の流量をとにかく増やせば良いわけでなく、人間の呼吸に合う流量であることが重要です。最適な流量を供給するファンであること、そして必要な流量の範囲内で効率よく駆動するモータとのバランスが取れているものこそ、優秀なPAPR用ブロワであると、技術開発チームは考えました。

まず、従来のPAPRブロワの流量、軸トルク、静圧などを測定してベンチマークを作成します。その結果、PAPR用ブロワとして求められる流量の領域に、ブロワの性能効率のピークが無いことが判明しました。実用的に必要な流量とブロワの性能のピークにズレがあり、ここに従来のブロワの欠点が存在しました。当社は、この従来製品とは一線を画すブロワの開発に着手しました。

img-002-01.png 従来品のベンチマーク測定結果

人の呼吸をアシストするために必要な空気の流量は200L/min以下。その領域でのブロワ効率を改善するため、各種シミュレーションツールを使用し、流体解析や回路計算、圧力変化など解析を実施しました。その結果、ファン内部だけでなくケーシングに損失があることも分かりました。また、モータとファンそれぞれに目標の動作点を達成し、さらにその2つを組み合わせることは難しい作業でした。これには、モータとファンそれぞれに設計ツールを準備することで、解決へと導きました。このように、モータだけではなくファンとケーシング、そのすべての相性を考慮しながら開発しました。

img-002-02.png 実使用流量域である200L/min以下での効率改善に成功

その結果、従来よりも約40%の小型軽量化を実現するとともに、実使用領域での効率を改善。通常のバッテリー駆動における稼働時間を1時間以上も向上させることにも成功しました。ここに、当初の目標である「作業者の負担を大幅に軽減させるPAPR用ブロワ」が誕生することとなったのです。

技術の獲得を"オープンイノベーション"で

ファンの設計においては、小径化と軽量化のために設計技術をさらに向上させる必要がありました。もともと当社は、社内に無いものは外部から積極的に取り込み、力にしています。今回のブロワ開発では、大学などの研究機関と連携し、ファンのプロトタイプを製作しました。そして、それをもとに羽根径、羽根高、翼角度などすべての設計精度を高める作業を繰り返しました。

また、開発チームが重点的に行ったことは、従来製品のベンチマークと、開発段階での部品レベルでの解析でした。顧客要求を見極めるため、そしてそれを実現するために綿密な解析作業をやり遂げ、ブロワに進化をもたらしました。今回のブロワ開発は、モータのみならずファンやケーシングといった幅広い開発技術を持ち、「子細な分析から理想の製品を作り出せる」という当社開発陣の能力を表していると考えます。

ブロワのさらなる高効率化で、社会を快適に

PAPR用ブロワの開発で培った当社の技術は、医療機器や車の空調など、サイズや重量、消費電力などで制約の多い他の分野においても適用できると考えています。今後は、モータやファンの性能向上と最適化をさらに進め、より小型軽量化、長時間駆動とともに、静音かつ低振動といった一段階上のブロワを目指します。

ブロワの高効率化は、お客様が開発する製品の駆動時間を延長させ、その製品を使用するエンドユーザーの生産性の向上につながります。また、ブロワの小型化・静音化は、お客様製品の設計の自由度を高め、デザイン性の向上やコストダウンにもつながるでしょう。

当社のブロワが、工場や病院での作業をより快適に、そして安全なものにすると確信しています。さらには、住宅設備の浄化槽や車載用ブロワなど、他の多様な分野に当社のブロワがより普及しやすくなることで、さまざまなお客様の要望に届く製品となることは間違いありません。