新製品の医療機器に搭載するモータをASPINAとの協業で選択
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呼吸器系医療機器メーカーR社
製品開発段階のモータの性能評価でトラブルが発生
医療機器の開発中につまずいていたモータの評価と選定に関して当社がアドバイスや提案を行い、それにより新製品の発売が加速された事例です。
呼吸器系医療機器業界では、市場規模の拡大や患者QOL向上への期待、技術的なイノベーションに対応するため、M&Aや事業再編が顕著になっています。業界のトップ企業の1つであるR社でも同様に、オフショアの拠点に開発部門を集約し新たに多くのエンジニアを採用しました。そして、発売から10年以上経過している呼吸器系医療機器について「ベッドのサイドテーブルや患者のベッドにも置ける、より小型の次世代機を開発せよ」と社命のもと開発チームを結成し、設計に着手しました。
開発チームでは原理試作の後、量産に向けた設計の段階で、機器内のコンプレッサーを動かす小型モータの選定に取りかかりました。コンプレッサーは自社設計品で、モータを制御するドライバは購入品を使用し、候補となるモータの評価を行うことになりました。ところが評価試験を開始したところモータが適切に動作しないという問題に直面しました。製品仕様上はコンプレッサーの負荷に対して余裕のあるモータであるはずが、実際にはトルクが得られる前に回転が停止してしまいました。開発チームのご担当者様は当時「適切に電力供給できているかなどをチェックしましたが、根本的な解決策が見つかりませんでした」と述べています。
購入したモータは量産設計段階で、組み付けが困難でかつ高価なため不向きと判明
当時評価していたモータは設計変更ができない既製品であり、取り付け部をカスタマイズできないため、次世代機の狭小な筐体内に適切に組み込むのが困難であることが判明しました。またコンプレッサーに接続するシャフトを覆うスペーサーが必要で、「既製のスペーサーがなく、社内に設計資料もないため、その設計をゼロから行わなければならない」ことも分かりました。さらに、既製品モータが割高であることから、次世代機の原価計画に大きな影響があることも分かりました。
このように開発チームでは、量産に向けた設計段階で課題が山積し、開発は1年以上にわたり進捗が困難な状況が続きました。そしてこの状況を打破したいと考えていたところ、自社の購買部門からASPINAが自社の他の製品でモータを供給していることを知り、ASPINAに相談してみることにしたとのことでした。
モータの性能評価や機構設計をアドバイス 試作機をASPINAで評価し、性能・作りやすさの点で最適なモータを提案
開発チームはASPINAの技術者を開発現場に招き、実際の評価試験に立ち会ってもらうことにしました。技術者は試験の様子を見て、モータへの供給電力を測定する方法に誤りがあるのではと気づきました。そこで測定方法を変更していただくようお伝えし再度試験して調べてみたところ、モータへの供給電力についてドライバの設定に誤りがあることが分かりました。設定を変更してあらためて試験を行うとモータが適切に動作するようになり、コンプレッサーを動作させるのに必要なトルクを算出することができました。
さらにR社とASPINAとで話し合い、ASPINAでモータに必要な特性を見極め、かつ狭小な筐体内に収容可能な機構設計を行うため、R社は試作機を貸し出すことにしました。ASPINAでは、モータにかかるコンプレッサーの負荷など、様々な点から試作機の評価を行いました。幅広い種類のモータの開発やモータと周辺の部品とを組み合わせたモジュールの開発で培った技術、コンプレッサーの開発で得たノウハウを駆使しました。
MEビジネスユニットの香山哲生副ビジネスユニット長は、「既製品のモータは、お客様の要求に対しオーバースペックになりがちで、その一方でサイズやコストはお客様の要求に合わないという場合があります。今回は、必要なトルクを得つつサイズやコストを最適化した、次世代機にふさわしいモータを当社で設計できることが分かりました」と当時を振り返ります。
ASPINAの技術者は、50年以上にわたる民生品向けモータの開発製造で得たノウハウを有しており、これら技術者からなるチームがこの医療機器に最適なカスタム設計を行いました。ベースとなるモータは、ASPINAの幅広いモータラインナップの中から、コンプレッサーの負荷特性に合いスペースの制約をクリアするアウターロータタイプのBLDCモータを選択しました。しかし完全なカスタマイズではなく民生品向けに多数の採用実績がある部材を積極的に採用し、医療機器の品質に対応しつつ信頼性やコストとのバランスを取りました。また製造工程での組み立てやすさは医療機器の原価にも影響します。ASPINAはコンプレッサーとの間に必要なスペーサーとモータとを一体で設計することで、筐体内の狭小なエリアに収容でき、組み立て作業もしやすいサイズ、形状としました。
最終的にR社は、コンプレッサーに接続するシャフトやスペーサー、マウント部などを組み合わせたモータの供給先をASPINAに決定しました。そして従来機から大幅に小型化した呼吸器系医療機器を発売しました。
医療機器特有の複雑で長期にわたる認証プロセスに対応 医療機器のライフサイクルに配慮した供給体制を構築
R社をはじめとする医療機器メーカーにとって、医療機器の開発・製造に求められる品質管理と収益性とのバランスを取ることが極めて重要です。ASPINAは、当社が提供する製品のQCDを最適化することでこのバランスを実現します。お客様の概念設計から量産設計、製造、アフターセールスまでの各ステージで求められる品質管理レベルや方法がお客様ごとに異なります。当社はそれに応じて、開発時の評価基準、生産ラインの清潔性、トレーサビリティなどを含む品質管理体制をご提案します。「ASPINAは医療機器開発製造の認証プロセスをよく理解している点や、お客様ごとに異なる品質管理要求に合わせることができる点で、モータメーカーの中でも際立った特長があります。」(香山)
また今回の事例に限らず、医療機器は製造販売期間が長いため、機器に使用される部品は供給期間(EOL)を意識して選定されています。ASPINAはこのような業界特有の課題を理解しており、長期供給が可能な提案を行っています。
ASPINAは、医療機器開発のパートナーとしてお客様のビジネスを長期的にご支援します。お気軽にお問い合わせください。
関連情報
課題
- M&Aや事業再編、長い製品開発サイクルにより、モータの評価や選定を行う知見やノウハウ、情報が社内で不足
- 既製品モータでは小さな筐体の中に組み付けるのが困難で、材料費が高くなる要因にも
- 複雑で長期にわたる医療機器認証プロセスに対応できるモータメーカーが見つからない
対応
- お客様開発現場での評価への協力や実機を借りての試験などを通じ、モータ評価方法を助言・支援
- 狭小な筐体に収容できるサイズで高性能なモータを提案 組み付けしやすい機構設計
- 医療機器の開発製造に特有の顧客要求に合わせて柔軟に対応する、品質管理体制や長期供給体制
Exhibition information
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2024年11月19日
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2024年10月15日
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2024年10月8日