遠心ポンプとは?
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液体搬送
2025年11月21日
遠心ポンプの基本
遠心ポンプとは、回転するインペラ(羽根車)によって流体(主に液体)に遠心力を与え、流体を移動・圧送するポンプの一種です。流体を吸い込み、回転によって圧力を高め、出口から押し出すという仕組みになっています。
遠心ポンプの主要部品
遠心ポンプは次の主要部品で構成されています。
- インペラ(羽根車)
- インペラは回転体であり、その回転によって流体に遠心力(エネルギー)を与えます。形状の違いによって、以下の特徴があります。
- オープン型:固形物を含む液体にも比較的強く、詰まりにくい構造ですが、摩耗しやすく効率はやや低めです。
- クローズ型:高効率なインペラで、清浄な液体を扱うポンプに適していますが、固形物を扱うポンプには不向きです。
- セミクローズ型:オープン型とクローズ型の中間の形状のインペラで、軽度の固形物を含む液体にも対応できます。
- ケーシング(渦室)
- ケーシングは流体を吸い込み、回転によって圧力を高め、出口から押し出す役割を持ちます。吸込口と吐出口があります。
- 吸込口(吸込管)
- 液体をポンプ内に導入する入り口で、通常はインペラの中心(軸方向)に設置されます。
- 吐出口(吐出管)
- 圧力が高まった液体をポンプの外へ送り出す出口で、ケーシングの側面に設置されます。
- シャフト(軸)
- モータなどの動力源とインペラを接続し、インペラを回転させます。
- メカニカルシール/グランドパッキン(軸封)
- ケーシング内の流体がシャフトを伝って動力源へ流入することを防ぐ密封装置です。
遠心ポンプと他のポンプとの主な違い
以下は、遠心ポンプと自吸可能な他のポンプとの主な違いです。
| 遠心ポンプ | ピストンポンプ | ギヤポンプ | |
|---|---|---|---|
| 原理 | 遠心力による液体移送 | ピストンの往復動作による圧力発生 | 歯車の噛み合いによる流体押出 |
| 自吸性能 | 呼び水が必要※ | 自吸可能 | 比較的自吸しやすいが限界あり |
| 圧力性能 | 中圧(〜0.6MPa 程度) | 高圧対応可能(数MPa以上) | 中圧(〜1.0MPa 程度) |
| 流量特徴 | 圧力変動で流量が変わる非定量型 | 高精度な定量性 | 比較的安定した定量性 |
| 対応粘性 | 低粘度液体 | 低〜高粘度液体 | 中〜高粘度液体 |
| 寿命 | 長め(摩耗部品が少ない) | 短め(シールやピストンの摩耗あり) | 中程度 |
| 構造の複雑さ | シンプル | 非常に複雑 | やや複雑 |
| 初期コスト | 安価で導入しやすい | 構造が複雑なためコスト高になりがち | 中程度のコスト |
| 図 |
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※装置を付加することにより自吸可能なポンプもあります
遠心ポンプが選ばれている理由
遠心ポンプが選ばれる理由として、以下の特徴が挙げられます。
- 構造がシンプルで堅牢:部品点数が少なく、故障しにくいです。
- 連続運転に適している:冷却水循環や給水設備などに最適です。
- 大流量の搬送が可能:大きな流量が必要な用途に適しています。
- 運転中の流量調整が容易:インペラの回転数制御により調整できます。
- コストパフォーマンスが高い:同等性能のピストンポンプ、ギヤポンプと比較して価格が安く、保守費用も低いです。
- 幅広い用途・流体に対応可能:清水だけでなく、薬品・油・海水などにも使用できます。ただし、適した材質の選定が必要です。
遠心ポンプの選定や運用に関わる用語
遠心ポンプを長く、効率よく使用するためには、用途に合わせて適切な性能をもつ遠心ポンプを選ぶことが重要です。ポンプの性能は以下の項目で表され、選定の際に留意する必要があります。
- 流量(L/min):ポンプが単位時間あたりに移送できる液体の量です。
- 全揚程(m):ポンプが持ち上げられる液体の高さで、圧力で表す場合もあります。
- ポンプ特性:「Q-Hカーブ」で表し、流量と揚程の関係を示す特性曲線です。
- 負荷曲線:配管の摩擦損失や高さなどにより決まる必要揚程の曲線です。
- ポンプ動作点:ポンプ特性と負荷曲線が交差する点です。
- ポンプ効率(%):入力電力に対して、どれだけ有効に流体にエネルギーを与えたかを示す指標です。
遠心ポンプのQ-H特性図の例
遠心ポンプを使用する上での注意点
遠心ポンプを使用する際は、以下のことにご注意ください。
- 遠心ポンプに適した液体を選定する
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- 低粘度である
- 固形物を含まないか、軽度に留める※
※オープン型やセミクローズ型インペラの遠心ポンプは、軽度の固形物を含む液体にも比較的対応可能 - 気泡やガスを含まない
- 常温〜中温(目安:0~80℃程度)
- 空運転をさせない
- 空運転させないために、起動前にポンプおよび吸込配管内に液体を満たしておく必要があります。空運転は異常発熱や軸封の摩耗など、致命的な故障を引き起こします。
- キャビテーションを防ぐ
- キャビテーションとは、回転で生じる圧力変化によって液体が気化して泡が発生し、その後、圧力が再び上昇した際にこれらの泡が急激に潰れる現象です。この現象で発生する衝撃により、遠心ポンプの性能低下や振動・騒音、インペラの破損などの問題が引き起こされます。以下のような条件でキャビテーションが起こりやすくなります。
- 液面から吸込み口までの揚程が大きい
- 吸込み口の流速が速い
- 配管損失が大きい
- 液体の比重が大きい
- 飽和蒸気圧が低い
- 大気圧が低い
これらの条件を踏まえて、ポンプメーカーではキャビテーションが発生しないよう設計を行っています。

